クーロンブロッケード現象は静電容量が微小なトンネル接合でおこるため、この現象を応用するデバイスは極端に微細な構造が必要となる。そのため、現時点での実験デバイスの中にはランダムな構造を有しているものが多い。本研究では、絶縁体薄膜上に金属微粒子を蒸着させてできる2次元的な不規則配列で生じるクーロンブロッケードデバイス回路を採り上げることにした。最近接の金属微粒子対がトンネル接合を形成する。金属微粒子をドットとよぶことにして、2次元的にランダムに配置されたドットからなる系にたいして以下のモデル化を行った。ドットの系を回路トポロジーとしては規則的な2次元格子状であるとし、ランダムな配置の影響は、ドット対の間のトンネル接合の容量とトンネル抵抗がランダムな値をとると仮定して考慮する。また、回路の制御用にドットの配置されている面の上方にゲート電極を配して、各ドットとゲート電極の間に容量が存在するものとする。トンネル接合の容量とトンネル抵抗およびゲート容量の値はコンピュータで正規乱数を発生させて設定した。半古典理論であるオーソドックス理論でデバイス回路の動作をシミュレートするときに各トンネル接合の臨界電荷を求めることが必要となる。昨年度作成した臨界電荷計算プログラムを基に、回路全体の動作をシミュレートする計算プログラムを作成した。容量値が一定のときと、ランダムなときとの電流電圧特性の違いを明らかにすることができた。
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