研究概要 |
この研究全体の基礎検討のために,本年度は,2次元再帰的適応ディジタルフィルタと2次元非再帰的適応ディジタルフィルタの収束性についての理論的解析を行い,その信号処理能力を評価した. 1.2次元再帰的適応フィルタ:分母分離形2次元方程式誤差適応IIRフィルタのためのバイアス除去アルゴリズムを提案し,その収束性の解析を行った.方程式誤差にもとづく適応IIRフィルタリングアルゴリズムは,高速の収束と単峰性の誤差局面に利点がある.しかし,観測雑音がある場合には,このフィルタはバイアスのあるパラメータ推定値に収束する.このバイアスの問題をとりあるかうために,提案アルゴリズムでは直列セクションのそれぞれの出力誤差の伸縮した値を用いる.これによって,方程式誤差IIRフィルタのすぐれた収束特性を維持しながら,観測誤差が抑制される.この入出力の安定性を解析し,安定性を維持するための拘束条件を導いた. 2.2次元非再帰的適応フィルタ:2次元LMSアルゴリズムを2次元FMモデルとして表現し,このフィルタの平均2乗誤差の解析を行った.この解析では,よく知られた独立性の仮定を用いる.入力信号が白色ガウスであるとき,解析結果についてとくに詳しく解析した.この結果,平均誤差が収束するためのステップサイズの条件よりも,平均2乗誤差が収束するためのステップサイズの条件はより厳しいことが明らかとなった.シミュレーションによって,この解析結果の妥当性と有効性が示された.
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