研究概要 |
本年度は,2次元適応ディジタルフィルタリングのアルゴリズムを提案するとともに,その動的挙動を理論的に解析した. ●誤差方程式に基づく2次元適応IIRフィルタの問題点を整理し,これを解決する手法を提案している.望ましい信号が加法的雑音によって乱されている場合,誤差方程式に基づく2次元適応IIRフィルタの係数推定値にはバイアスが発生することを指摘し,2次元バックプロパゲーション適応IIRフィルタにおいて,このバイアスを除去するための非線形アルゴリズムを提案し,この安定性を解析している. ●2次元LMS適応フィルタの平均2乗誤差(MSE)を解析している.このフィルタでは係数が2次元的に更新されているため,MSE解析のために2次元の2次差分方程式の安定性を検討する必要があるという困難な問題点を指摘し,この問題点を解決するために独立性仮定法と直接平均化法の2つの方法を用いている.これによって,係数が2乗平均において収束するための条件をはじめて導出するとともに,この条件は,平均において収束するための条件より厳しい条件であることを明らかにしている. ●2次元ブロックLMS適応フィルタを提案し,そのMSEを解析している.上記の成果を利用して提案アルゴリズムの収束性を解析し,その結果,2次元非定常信号に対して提案アルゴリズムは安定性が向上することを明らかにしている.
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