研究概要 |
これまで我々は声道形状と音響特性及び聴覚知覚との関係を解明するため、MR画像から声道形状を計測する方法を開発した。MR画像から成人男性、女性各3名、子供1名の日本語5母音発声の声道形状及び声道の各部分の寸法を計測し、年齢・性別による声道形状の違いと音響特徴の関係について調べた。その結果、声道の解剖学上の違いは音響的に影響が小さいことを明らかにした。 本研究ではMR画像(Magnetic Resonance Image)により計測した男性、女性の声道形状の個人性を検討し、声道形状の各部分の違いが音響的な影響及び知覚との関係について検討する。母音の類似性に関する聴覚実験の結果から、性別による音響特徴の違いは主に声道長に依存することが分かった。同じ音質の母音を発声する時の声道形状と音響特徴を比較した結果、成人男性は調音的近似(相似性)よりも音響的パラメータ(聴覚的に重要であるF1,F2,F3)を「不変量」として発声している示唆が得られた。また、高次フォルマント(F4,F5)は声道の変動に対して安定な個人性特徴であることを示した。 音声信号からロバストな個人性特徴パラメータを安定に推定できる分析方法の開発は今後の研究課題である。 本研究の成果は1996年10月に米国フィラデルフィア市で開かれた第4回音声言語処理国際会議[1]、平成9年2月の電子情報通信学会の音声研究会[2]で発表した。 [1]"Speaker individualities of vocal tract shapes of Japanese vowels measured by magnetic resonance images,"Proc.ICSLP96,pp.949-952(1996). [2]"Invariance and individuality of the vowel : evidence from articulatory and acoustic observations,"Tech.Rep.IEICE,SP96-120,pp.43-48(1997)
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