研究概要 |
セルラ移動通信系においては,一般に呼量は変動し,空間的な呼量の分布は不均一になる.このとき,大きさの等しいセルでサービスエリアを被覆し,各セルのチャネル数を一定にすると,呼損率の高いセルと低いセルが生ずる.つまり,チャネル(周波数)の利用効率が低くなる.このとき,チャネル利用効率を向上させるための手法として,セルの大きさを変化させ,各セル内の呼量を一定値以下に保つ手法(ダイナミックセル配置)や,各セルに割り当てるチャネルの数をダイナミックに変化させる手法(ダイナミックチャネル割当て)が考えられる.平成8年度には,主に基地局(セル)配置問題について研究を行い,遺伝的アルゴリズムを用いた手法が有効であることを示した.平成9年度は,平成8年度から継続して研究を行い,呼量が変動し,不均一な移動通信系に対してダイナミックチャネル割当てを適用する際に必要となる通信トラヒック特性の特徴づけに関して研究を行った.呼量が不均一な移動通信系におけるダイナミックチャネル割当ての通信トラヒック特性をクリークパッキングを用いてモデル化できること,呼損率をクリークパッキングモデル上で解析できることを示した.また,利用者の移動を考慮した上で,ダイナミックチャネル割当てが適用された移動通信系の呼損率,強制切断率を解析する手法を提案し,その有効性を示した.平成9年度に得られた手法により,呼量が不均一な移動通信系におけるダイナミックチャネル割当ての通信トラヒック特性の特徴づけを行うことが可能となった.これらの研究成果は,呼量が変動し,不均一な移動通信系におけるサービス品質の均一化,周波数有効利用のために有効である.また,今後の課題として,移動通信系の柔軟性を高めることが,マルチメディアサービス等に対応した将来の移動通信系の開発には重要であると考えられる.上記の研究成果は学会において公表している.
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