研究概要 |
マイクロ波帯における発振器とアンテナとを一体化した能動集積アンテナにおいて,発振周波数および放射方向などを光信号によって制御する研究を昨年度に引き続き行った.アンテナとしてはマイクロストリップパッチアンテナを採用し,パッチ導体は円形ならびに短形のものを用いた.また発振回路の能動素子としてFETを用い,それをアンテナパッチの上に直接装荷する形のものとして,発振回路からアンテナへの給電回路を省けるようにしてある. パッチ導体の寸法・配置などの形状はまだ最適化できていないが,発振回路におけるFETの設地方式をソース接地からゲート接地に変えることにより,昨年度のものより安定した発振が得られた. マイクロ波で変調した光を照射することによって発振に注入同期を行うことを試みたが,予期した動作を示さなかった.原因は注入同期に必要なだけの光電力が充分ではないことと,発振周波数が高いことにあると考えており,今後は低い周波数帯で試みる必要がある. 2つの能動アンテナの発振が逆位相のものについては昨年度報告したが,今回はさらに同相で同期発振したものについてもビーム走査が可能となった.また3素子のアレーアンテナも試作し,アレーの端の素子のFETにレーザ光を照射することによってビーム方向が走査できることを確認した.これにより本方式による光制御ビーム走査を多素子のアレーに対しても拡張できることが示された. 解析としてはFETの集中定数回路モデルを時間領域有限差分法に組み入れた手法を用いた.これによりパッチ導体の寸法やアンテナ基板の厚みなどの3次元的な形状を考慮したアンテナ共振周波数の解析と,FETを含む発振回路の解析とを従来のようにそれぞれ別個に解くのではなく,両者を一体にして解くことを試み,その有効性と問題点とを明らかにした.
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