鹿児島地方では、降雨特性は亜熱帯性の特徴を示し、衛星放送の下り回線マージンを越える降雨強度50mm/h以上を記録することもめずらしくない。そこで降雨減衰を補償する方法として2台の小型アンテナを用いた開口合成アンテナを構築するとともに、他の単一アンテナと、また単一アンテナ同士での減衰特性の比較を試みた。 まず、Gunnダイオードを用いた10GHz共通局部発振器を製作し、発振出力21dBm、周波数の変化±2MHz/日とほぼ目標とする特性を得られた。次ぎに短径50cmオフセットパラボラBS放送アンテナ(コンバータ)を改造し、外部から局部発振信号を注入できるようにした2台を、8mの間隔を置いて(他の研究の基礎実験との併用のため)設置した。また、既設の短径50cmオフセットパラボラアンテナとともに、短径75cmオフセットパラボラ、直径30cmセンターフィードパラボラアンテナを設置し、それぞれの降雨減衰データを計算機に取り込めるようにした。 開口合成アンテナと単一50cmアンテナとの比較では、およそ1.1dBの向上が得ることができ、電力合成部などを、より整合があうようにすれば、さらに向上すると思われる。 単一アンテナ同士の降雨減衰特性を、梅雨期の、降雨強度10mm/h以上を記録した日のデータをもとに比較した。その結果、減衰量は50cm>75cm>30cmの順に大きくなっていることが判った。 継続して観測・解析する必要はあるが、雨域の広がりとアンテナの利得・ビームパターンから、50cmアンテナが一番降雨の影響を受けているのではないかと考えている。 今後の観測・解析も含め、上の結果から30cmアンテナによる開口合成アンテナも今後検討する必要もあると思われる。
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