マルチメディア通信の早期の大衆普及性を目指すマイクロ交換機分散網の研究において、本年は特にマイクロ交換機分散網をインターネット用アクセス網として利用するアーキテクチャの検討を進めた。特に、加入者が直接アクセスする一次ル-タの配置について、性能、経済性の観点からの対案比較検討を行った。対案は、ルーターを(1)バックボーン網としてのATM網内に配置する方式、(2)マイクロ交換機分散網内に配置する方式、(3)加入者線マイクロ交換機内に配置する方式である。このうち、加入者線マイクロ交換機にル-タを配置する方式が望ましいことを明らかにした。また、以下のような高速でマイクロ交換機向きのインターネットアクセスアーキテクチャを考案した。すなわち、情報量の少ない上りのインターネットアクセスには信号回線を利用する。加入者線信号にはISDNのDチャネル信号を、局間共通線信号には筆者の考案であるセルベース信号方式を用いる。また、多量の情報転送が必要な下りのダウンロ-ディングには、ディジタル時間スイッチのシーケンシャル書き込み、ランダム読出しを可能とする高速STM回線を利用する方式である。この結果、高速で、回路規模が少なく、回線利用の多重度が高く、経済的となる。なお、ル-タ数が膨大となるが、オンチップ化可能なアーキテクチャであることから問題とならない。この方式は、非対称型高速ディジタル加入者線(ADSL)とも適合し、一般利用者が高速で、快適なインターネット利用を可能となる通信網の構築に有効となる。
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