流星バースト通信(MBC)によるデータ収集ネットワークプロトコルの一方式として、後述する電力変化法を提案し、その有効性を理論面と実験面から確認を行った。それらの研究成果は3月に行われる電子情報通信学会総合大会にて発表する。また、電力変化法の解析に必要な通信路の数学的なモデルに関する論文を作成し、電子情報通信学会に審査を依頼した。 多くのMBCシステムでは、主局がプローブという探査信号を繰り返し送信し、端末はプローブの受信により通信路の発生を知るという方式が用いられている。多くの端末を有するデータ収集システムでは、複数の端末が同時にプローブを受信した場合、その後に続くデータ転送は衝突のためにほとんど失敗する。そのため、最適な端末数でグループ化を行う方式がいくつか提案されている。昨年度、その一方式としてプローブ電力を制御する電力変化法を提案した。電力変化法はプローブの電力を小さくすると端末がプローブの受信に成功する確率が小さくなることを利用してグループ化を行うもので、制御が簡単な上に継続時間の長い流星バーストを選択して利用できるという効果もある。 本年度は電力変化法の解析に必要なプローブ電力と通信路特性の関係を、観測実験をもとに解析し、数学的なモデルを導いた。観測実験は静岡県と青森県に設置されている静岡大学工学部の実験システムRANDOMを使用しておこなった。また、簡略化したものではあるが電力変化法のプロトコルを実現し同システムで試行している。実験局への移動と実験機材の開発や観測データ解析のソフトウェアの購入に本研究費用を使用した。RANDOMでは2局間での実験しか実施できないため、昨年度から複数の通信路をシミュレーションする装置の開発を開始している。本年度はこのハードウェアの作成が完了した。来年度はこのソフトウェアを完成させシミュレーション上で理論値と実験値の比較検討を行う予定である。
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