流星バースト通信(MBC)は、流星が大気に突入する際に残す電離気体柱を電波の反射体として利用し見通し外通信を実現する通信方法である。小容量の通信路であるが衛星を使ったシステムに比べ安価に実現できることことから、広範囲にわたる気象データの収集などに利用されている。本研究ではMBCの最も有効な応用分野であるデータ収集ネットワークシステムのプロトコルについて過去に提案された方式の数学的なモデルによる解析および新たな方式の提案を行った。研究は静岡大学が運用する流星バースト通信実験システムRANDOMでの通信路の観測および通信路のシミュレーション装置によって行われ、本補助金は主に観測実験の旅費およびシミュレーション装置の構築に充当した。 研究初年度には流星バーストによるデータ収集プロトコルの各種方式の分類、比較等をまとめて電子情報通信学会論文誌に発表した。その論文ではグループポーリング方式のグループ再編方式が実用に際して有効であることが理論的に述べられている。また、新たに主局の送信電力を変化させて効率を上げる電力変化法を提案している。 電力変化法の有効性を理論面から解析するためには、従来用いていた通信路の数学モデルを見なおす必要があった。そこで、研究2年度には数回の観測実験を行い、電力変化法の解析に必要な通信路の数学的なモデルを得た。研究3年度には、これらの成果を「流星バースト通信におけるプローブ電力と通信路特性の関係」として電子情報通信学会論文誌に発表した。また、1998年11月に33年ぶりの大出現が予測された獅子座流星群について、流星バースト通信の観点から観測をおこなった。この実験により、MBCにとって特異な状態である流星群出現時においても我々が提唱しているモデルがパラメータの変更のみである程度適用できることが判明した。
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