研究概要 |
1989年にボイジャー2号が海王星の向こう側を通過する際に、探査機からの無変調信号を日本とオーストラリアの3受信局の4つのアンテナで受信し、それぞれを解析し海王星大気の様々なプロファイルが報告された。 さらに、このような弱い信号のSN比の向上のために、2.3GHz,8.4GHzのそれぞれ2つのアンテナのデータを合成し高SN比を得るコヒーレント・シグナル・アレイングがおこなわれた。このアレイングを正確に行なうためには、伝搬路長を精密に求めて2受信信号の伝搬路長差を除去する必要があり、観測結果の惑星大気データから惑星形状を考慮した大気モデルを作り、伝搬路と大気の屈折率の関係を表す次式をもとにしてレイ・トレーシングを行なった。d/(ds)(μ(dr)/(ds))=grad μ sは光路程,μは屈折率,γは位置ベクトルを示す。海王星大気内で10000[m]の短くて多くのステップに区切って伝搬路を追跡し、軌道や大気による屈折から影響されるドップラー周波数偏移をシミュレートし、約10Hz以下の精度で正確に求まることがわかった。これによって、伝搬遅延時間差および位相差を求めてこれを除去しアレイングの精度を向上できる。この手法によって位相比較の際にサイクル・スリップが発生するのが抑制され、非常に良い効果がある。さらに、このレイ・トレーシングの応用として、電波の屈折のDefocusingによる電波の減衰のシミュレートし、観測結果に非常に近似した良好な結果を得た。 現時点では、最終的に、解析結果を用いて2信号を正確にアレイングを行なっている研究を進めている。この研究成果は論文としてまとめ発表する予定である。 以上の研究は平成8年度の単年度で行なわれた。
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