電力系統の設備余裕率が低落傾向にあり、系統事故時には運転点が安定限界ぎりぎりに追い込まれることがある。本研究では、電力系統の安定性を判断するため、電力系統のシミュレーションおよび同期機のモデルの観点から、次の点を明らかにした。 ・制御系を含む一機無限大系統の計算機シミュレーションを行い、定態安定限界近傍における系統の動作に及ぼす制御系の効果を調べた。発電機の出力、線路長、PSSゲインを変化させて分岐集合を求めた結果、安定な運転点(平衡点)から持続動揺(周期解)への分岐、フリップ分岐、カスケードを経た後のカオス、サブクリティカルホップ分岐等を観察することができた。また、対象とした系統では、発電機のガバナを動作させない方が、より安定になることを示した。これは、供試系統のガバナおよび水理系の特性と、系統動揺の共振現象によることが判明した。 ・界磁極片端部に飽和のある同期機を対象として、その非線形性を表現するモデルを構築した。すなわち、同期機内部の磁束の挙動を磁気回路により表し、同期機の空隙に生じる磁束分布を計算するモデルを作る。可飽和部によって消費される起磁力を仮想的な飽和電流として表現し、空隙部のパ-ミアンスに着目することにより、界磁極片の局所的な飽和を考慮して、同期機の空隙磁束分布を計算するモデルが得られた。いくつかの負荷状態で同期機を運転する実験を行い、構築したモデルで計算される磁束分布と実測した磁束分布の一致を確認した。
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