本研究では、ロボット・アームの実時間制御に伴う膨大な制御則の計算処理を、適切な処理単位(タスク)に分割して、それらの処理に要する時間が最短となるような、複数のプロセッサへの配分方法を考える最適化問題に対して、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)の構成方法を提案すると共に、その実用性と有効性について多角的な評価を行った。以下に、本研究で提案した新たな手法と、得られた成果を示す。 1.順列変換による個体の符号化: 最適化問題に対してGAを適用する場合、その許容解は1つの個体として扱われるが、本研究では典型的な分割問題を対象とするため、巡回セールス問題など順序問題に対する従来のコード化方法が利用できない。そこで、「順序変換」という手法を用いた新たなコード化方式を提案した。 2.重み付きエッジ交叉の提案: GAの主要な探索手法である交叉において、親となる個体が持つ望ましい形質を積極的に子孫へ継承する交叉法として、「重み付きエッジ交叉」を提案した。この交叉法は「エッジ交叉」において、対象とする問題固有の特性を各エッジの重みとして考慮する。また、計算実験によって、提案した「重み付きエッジ交叉法」は、従来の交叉法よりも収束性において優れていることを確認した。 3.個体間の距離の定義と評価: 分割問題における2の許容解の間に距離を定義すると共に、提案した許容解の距離が「距離の公理」を満たすこと、また、多項式の時間計算量で求められることを証明した。 4.距離に基づくGAの挙動解析: 世代の更新に伴う集団内の個体間の平均距離と、距離の標準偏差を測定することにより、交叉法の違いによるGAの挙動の特性を評価して考察を行った。また、許容解の距離に基づき、交叉率を適応的に調節することで、集団内の個体の多様性が維持されることを確認した。 5.GAと分岐限定法の比較研究: 実際的な規模の問題に対して、提案したGAと分岐限定法を適用し、GAでは分岐限定法よりも短い計算時間で、より優れた解が得られることを確認した。 6.今後の展開: 来年度は、交叉と共にGAの主要な探索手法である突然変位について研究を進める。
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