本研究は、聴覚障害者のための発声発話練習プログラム「スピーチトレーナ」における、OS環境の移行と操作性の向上、およびマルチメディア機器への拡張に関する研究を行っている。 96年度には、従来特定のパーソナルコンピュータでのみ動作可能であったスピーチトレーナを、普及の著しいMicrosoft社製Windows環境への移植作業を行い、機種を問わないスピーチトレーナの実現について作業を行った。しかし当該年度中は同OSの一部が変更されたことから十分な移植作業が行いきれなかったため、本97年度では、まずその補填作業を行っている。 次に、マルチメディア機器への拡張に関する作業として、本年度は、これも普及の著しいコンピュータネットワークの利用を前提とした、練習データの転送に関する検討を行った。スピーチトレーナにおけるコンピュータネットワークの利用としては、ろう学校での多人数教育を想定した練習結果の一元管理および練習状況の掌握、指示などがまず考えられる。さらに、実用的な練習データの利用を想定すると、各教育機関のデータは相互利用できることが望ましいと考える。しかし重要視すべきことは、コンピュータネットワークが電話のような1対1の通信手段ではなく、他の第3者をも利用している通信手段であることである。また転送すべきデータは極めてプライバシーを重視すべきものでもあるので、その扱いには注意が必要である。 そこで本研究では、データの転送時に第3者が認知できなくさせるための秘密通信に関する符号化技術を重要視し、これに関する検討を行った。理論的コンセプトとしては、カオス信号を用いた秘密通信符号化に着目し、またこれを、16ビット長演算に基づく固定小数点演算により実現する方法について検討した。同分野では従来、アナログ回路を用いた実験、検討がなされており、再現性、実用性について問題となっていたが、本研究により、きわめて実用性の高い状態に導くことに成功している。
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