心拍数個体発生における自律神経性調節に関する生理工学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08650471
• 研究機関: 室蘭工業大学
• 研究代表者: 田澤 皓 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (40002109)
• 研究分担者: ピァーソン ジェームズ 室蘭工業大学, 工学部, 助手 (30261390)
• キーワード: 自律神経機能発達 / 自律神経剤 / 尿膜動脈圧 / 心拍数無侵態計測 / 心拍数ゆらぎ / 嘴打 / 孵化 / 胚呼吸運動

研究概要

アコーストカ-デイオグラム(ACG)法による胚呼吸運動の計測
卵内で成長する胚の心拍動に伴い、卵殻外面には微小な圧変化が起こっており、コンデンサーマイクロフォンで検出できる。この信号をアコーストカ-デイオグラム(ACG)という。ACG法により、孵卵後半10日間の鶏胚瞬時心拍数を連続計測した。この計測において絨毛尿膜嘴打(internal pipping,IP)直前から体動及び呼吸運動が、IP前後の期間における心拍数計測を不能にしたが、代わって、それらの運動が記録できた。絨毛尿膜から肺によるガス交換の切替に伴う、胚呼吸機能の発達に関して新たな情報取得の可能性が示され、今後の研究に発展させる。
孵化中の胚の瞬時心拍数計測
ACG法により、孵卵中期からIP準備期間に至るまでの胚瞬時心拍数の計測、及びIP前後における呼吸運動の計測が可能となり、新たな知見を得ているが、孵化中の胚の心泊数については別の計測法が必要となった。そこで、心電図(ECG)法に工夫を加えて、孵卵17日から卵殻嘴打(external pipping、EP)中に至る期間の胚瞬時心拍数計測を可能とし、特に、EP中の胚について心拍数ゆらぎに関する新たな現象を見いだした。
自律神経機能発達と心拍数ゆらぎとの関連
インピーダンスカ-デイオグラム(ICG)法、心弾動図(BCG)法、ACG法、ECG法及び動脈血圧測定により、鶏胚の成長初期からIP及びEP中に至る期間の瞬時心拍数を計測し、心拍数ゆらぎの多様な特異的パターンを明らかにした。これら心拍数ゆらぎの発現に対する自律神経の関与を各種神経興奮剤及び抑制剤を静注、動脈圧を測定、計測した瞬時心拍数のパターン変化から明らかにする実験を行った。一過性徐脈は副交感神経が関与していることを検証した。一方、一過性の多様なパターンを示す頻脈と交感神経機能との関連は明らかでなかった。

研究成果

• [文献書誌] Tazawa,H.: "Avian cardiovascular development." In:Development of Cardiovascular Systems,Cambridge University Press.193-210 (1997)
• [文献書誌] Akiyama,R.: "Noninvasive determination of instantaneous heart rate in developing avian embryos by means of acoustocardiogram" Medical & Biological Engineering & Computing. 35. 323-327 (1997)
• [文献書誌] Ono,H.: "Ballistocardiogram of avian eggs determined by an electromagnetic induction coil." Medical & Biological Engineering & Computing. 35. 431-435 (1997)
• [文献書誌] Tazawa,H.: "Incubation physiology." In:Avian Physiology. Academic Press.(in press). (1998)
• [文献書誌] Pearson,J.T.: "Development of heart rate in the precocial king quail, Coturnix chinensis." Journal of Experimental Biology.(in press). (1998)
• [文献書誌] Tazawa,H.: "Effect of incubator humidity on embryonic heart rate in the ostrich." J.of World Poultry Association.(in press). (1998)