冗長二進符号(以下RBCと略す)を用いた高速・高精度な信号処理システムの実現のため、本年度は以下の研究を行った。 これまでのRBC信号処理回路は、加算器や乗算回路等の組合せ論理回路を中心に検討されてきたが、本研究ではRBC信号処理システムを構成する上で必要となる3値のRBC信号を処理するためのフリップフロップやシフトレジスタの構成を提案し、回路シミュレータによる動作の確認を行った。また、Boothのアルゴリズムを拡張したRBC符号変換器の提案を行い、これを加算シフト形のRBC乗算回路に適用した場合演算遅延を約1/4にすることが可能なこと、加算木を用いたRBC乗算回路に適用することで使用素子数を半減できることを示した。 次に、低しきい値トランジスタと高しきい値トランジスタを組み合わせて消費電力の低減を図ったマルチスレッショルドCMOS(MT-CMOS)構造のST(対称3値)論理ゲートを提案し、これを用いたRBC加算回路の構成を検討した。提案した論理ゲート及び加算回路について回路シミュレーションによる動作の確認を行い、性能評価を行ったところ、消費電力について約1/5に削減できることを示した。また、アナログ-RBC変換回路として4値のRBCへの変換を行うA/Dコンバータを提案し、動作確認及びエラー訂正効果の向上を示した。 さらに、RBC信号処理システムの応用例として、プラズマディスプレイの駆動方式への応用を検討した。RBCの冗長性を利用した符号化により、発光時間と発光輝度を組合わせた時間輝度併用変調形サブフィールド法を提案し、この手法を用いることでプラズマディスプレイの画面のちらつきを改善できることを示した。
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