研究概要 |
音叉型水晶触覚センサの原理は振動子の基底部を物質に接触させた時の基底部からの振動エネルギー漏れによってインピーダンスが増大する性質を用いている。振動漏れが基底部から直接物質に伝わる直接型と振動子を固定するアクリルケースを通して物質に伝わる間接型の2種類のアクリルケースについて、硬さを変えた13種類のシリコンゴムに接触させる実験を行なった。この結果、直接型と間接型の両者共シリコンゴムの硬さをJIS硬度20から85まで増すとインピーダンス変化が線形的に増大し、直接型の方が間接型よりもインピーダンス変化が大きいことが判明した。この音叉型水晶触覚センサが硬さ知覚用触覚センサとして備えるべき条件を満たしているかどうか検討した。その結果、7つの条件のうち2つは実験できなかったが残りの5つの条件を満していることが分かった。5つの条件とは(1)硬い組織については接触圧によって硬さが変化しない。これを机とガラスへの接触実験で確認した。(2)同一の物質でも試料の厚さが異なれば硬さも変化する。これをシリコンゴムの厚みを変えた実験で、厚み4mm以下では下地の影響が出て硬くなることで確認した。(3)異なった性質の試料でも同じ硬さとして知覚する。これはシリコンゴムと消ゴムでJIS硬度40と50の各々について実験を行ない、同じ硬さと知覚したことで確認した。(4)異物の検出が可能である。これは厚み1.8mmのシリコンゴムの下に一円玉がある場合とない場合についてJIS硬度30,50,70の3種類について接触実験を行なった。その結果、JIS硬度70,50,30の順にインピーダンス変化量が大きくなり、軟らかいものの下にある異物程検出しやすいという人間の皮膚感覚と一致することを確認した。(5)適用できる対象物に制限がない。である。触覚センサとしては間接型の方が構成しやすい。そこでエネルギー漏れが効率よく伝わるアクリルケースの形状の最適化や音叉型水晶振動子の二つある振動子のバランスを崩し振動漏れを大きくして変化量を大きくする工夫が今後の課題である。
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