本研究は、多重解像度の手法を用いて、画像を異なる周波数レベルごとに、評価したり処理したりするシステムを構成しようとするものであるが、具体的な対象として、金属板の表面傷の検出について考察した。金属板表面の傷の検査は、従来、目視によって行われており、この検査の自動化、効率化、省力化ならびに定量化はいろいろ試みられながら、まだ実現できていない。本研究では、金属表面の画像データからウェブレット変換を計算し、変換画像空間での傷検査の可能性を検討した。今年度の成果を要約すると、 1.ウェーブレット変換関数を作成し、画像を局所周波数変換するためのフィルタを構成した。 ウェーブレット関数としてはいろいろなものが提案されているが、本研究では、コンパクトサポートを持つ2階のBスプラインウェーブレットを採用するとともに、その計算を実際に行う際に、ウェーブレット変換を積分形で行うのではなく、データの補間関数とウェーブレット積分の計算をあらかじめ行っておき、周波数ごとに異なる簡単なフィルタ演算でウェーブレット変換を求める手法を提案した。 2.傷画像へのウェーブレット変換フィルタの適用と傷の検査への適用性に関する考察を行った。 金属表面画像データのウェーブレット変換値を求め、傷を明確に示す画像へと変換するための方法として、Rosenfeldの非線形フィルタの効果をウェーブレットで計算する手法を提案し、数種類の傷の部分の検出が可能なことを明らかにした。今後、種々の傷への適用可能性について検討を進めるとともに、既存の各種の手法との組み合わせについても検討し、より実用的なアルゴリズムの開発を計ることが必要であろう。
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