本研究は、多重解像度の手法を用いて、画像を異なる周波数レベルごとに、評価・処理するシステムを構成しようとするものであり、昨年度は金属板の表面傷の検出について考察した。本年度では布の織り傷を対象として、傷部分の自動検出に関する検討を行った。これは、織り目のパターンが周波数領域で強いパワーを有しており、傷の検出そのものに対しては不都合な成分として現れるが、多重解像度の考えを積極的に利用することにより、傷と織り目の分離が可能となることを実証したものである。すなわち、布を撮影した画像には、傷の抽出の際、布の織り目等が強いエッジとなって現れるため、従来のフィルタなどにより傷を抽出するのは困難であったが、周波数分解によって傷と織り目とを分離することができ、傷領域を抽出することが可能であることを示した。 本研究のウェーブレットを用いた手法は、従来重要な画像処理の基本要素であるといわれながら、実際に利用されることの少なかった周波数領域での処理の実用化が可能であることが確認できたと考えている。また、ウェーブレット変換は、近傍の点の情報が与えられれば計算できるので、リアルタイム処理への適用も可能であり、オンライン傷検査への可能性も有望であり、さらなる研究を進めていく予定である。ウェーブレットを用いた手法は、従来重要な画像処理の基本要素であるといわれながら、実際に利用されることの少なかった周波数領域での処理の実用化に対する1つの答えを与えるものと考えており、この点からの種々の対象に対する応用も今後の検討課題と考えている。
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