研究概要 |
本研究は,ディジタル制御系の周波数領域における解析・設計手法としてすでに我々が基本的成果を得ているFRオペレータに基づく新しい理論をさらに発展させ,理論的観点からも実用的観点からも,より完成度の高いものとすることを目的としている.3年間の研究期間の初年度である昨年度は,以下のような研究成果を得ていた. 1.FRオペレータに基づくボード線図描画アルゴリズムの導出とそのMATLAB上での実装 2.非線形ディジタル制御系の取り扱いのための基礎の構築 本年度の研究により,これらの成果をさらに大きく発展させることができた.とくに,1.は,(サンプル点間応答を考慮した意味での)ディジタル制御系のボード線図を描画する方法を与えたものであり,工学的意味は大きいが,数値計算の観点からは,極端に大きなサイズの行列を扱う必要が生じる場合があり得るため,必ずしも望ましくない点が残されていた.本年度は,この難点に対して,ボード線図上の各点の近似値として,上界および下界値を効率よく計算する方法を与えるとともに,それらが真値に十分近いため,実用的にはこの近似計算法で十分な場合が多いと考えられることを明らかにした.この方法により,計算時間を短縮させることができるとともに,信頼性の高い計算結果を得ることができるようになった. 一方、2.に関しても,非線形ディジタル制御系の安定性に関する基本的結果を得るとともに,扱える非線形性のクラスを拡張することにより,より実用的な成果とすることができた.
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