研究概要 |
本研究では,a)蛍光の背景光,散乱光の大幅な低減,b)励起光の界面における局所的な電場の増強,の主な2点の特徴を持つ,有機分子からの微弱蛍光計測技術の研究・開発をめざす具体的には,多光子過程を用いることで,励起光と蛍光の波長差を大きくし,またその励起光としては,有機分子によるレーリー散乱が少ない近赤外レーザー光を用い,試料中及び試料からの散乱光,バックグランドノイズを大幅に低減し,また,金属表面の自由電子の集団振動の量子である表面プラズモンを励起し,表面場を増強する. 平成8年度の研究成果として,以下の2点を報告する. |1|多光子吸収による蛍光色素の蛍光励起とその計測(中村) 短パルスレーザーを光源に用いたレーザー走査顕微鏡を開発し,マウスの胎児の2光子(あるいは3光子)吸収蛍光像を測定した.光源にはチタンサファイアレーザー(発振波長750nm-850nm,パルス幅200fs)を用い,蛍光像は現有のイメージインテンシファイア付きCCDカメラ,およびの光電子増倍管により測定した.Z軸走査は新規購入したZ軸ステージにより行った.色素にはDAPI(吸収ピーク364nm,蛍光ピーク415nm)を用いて,その励起光の出力と蛍光強度,および散乱光強度の特性を,1光子吸収の場合と2光子吸収の場合を比較しつつ実験的に調べた.これらの知見をもとに,来年度は,大腸菌のDNAのヌクレオチド等の自家蛍光の励起を試み,分子の数と検出限界の関係を求める予定である. |2|表面プラズモン励起による蛍光計測(川田) 表面プラズモンを用いる高分解能顕微鏡を試作し,粒径0.5μmの蛍光ビーズの蛍光像を測定した.試作にあたり,表面プラズモンを励起可能な光入射の角度及び金属(主にAg)薄膜の膜厚を設計し,真空蒸着により,基板上に所望の厚さの金属膜を形成した.この膜上に発生する.増強された電場強度を理論的に計算した.現在,得られた像のS/Nや解像度などを解析している.
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