ロボットシステムに作業エラーからの自動回復機能を実現できれば、ロボットの適用範囲は飛躍的に拡大する。本研究は、そのための基礎として、作業エラーを検出する手法の開発を目的とする。具体的な対象作業として機械部品のはめあい作業をとりあげ、繊細で多様な作業の可能性を有するがその制御が複雑で困難な多関節多本指ロボットハンドを用い、力とトルク、物体の運動軌跡、位置や姿勢などの実時間計測データと、あらかじめ計画された合目的作業行動とのマッチングによる作業エラー検出手法を研究し、以下の成果を得た。 1.操作対象物体に所望の動きを実現するため、操作対象の幾何形状モデルとハンドの幾何および運動学モデルを用い、物体との指先との転がり接触に基づく指動作を計画する手法、ならびに所望の動きが実現できないときの把握変更計画手法を開発した。 2.種々の誤差があっても把握中の操作作業対象に過大な力が生じないようにするには、指の把握内力は小さいほうがよい。一方、把握物体に環境との接触を維持しながら移動させようとすると、摩擦による振動など予測困難な力の変動が生じる。このため指と物体との間で滑りを生じ、作業エラーを引き起こす。そこで、既開発の実時間視覚を用いて作業状況分析監視系を構成し、作業実行系と独立して並行動作させることにより、物体の位置姿勢の滑りによる変化を最小の時間遅れで検出する手法を開発した。これは、多関節多指ハンドの繊細で器用な作業能力を損なうことなく、回復可能な段階でエラーを検出するうえで有効な手法である。 3.トルクセンサで得られるデータに基づいて接触状態を知る方法について、ボルトのはめ合いと回転締めへの適用を行い、プリミティブとして実装し、実行可能な作業を拡大した。
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