磁心と電子回路とを用いて構成した電流や磁界センサにおける最小検出分解能は、磁心雑音と電子回路の雑音によって規定される。センサの検出分解能を向上させるためには、センサに用いる増幅器と直流安定化電源の低雑音・高安定化が重要な問題になる。特に、被検出諸量の大きさに対応して定める基準電圧の低周波ゆらぎは、センサの安定性を決定するため、可能な限り小さくしなければならない。また、直流安定化電源ゆらぎと雑音も、その電源に用いる基準電圧の振舞いに依存して定まる事から、ここにも高精度の基準電圧が要求される。 本研究では、各種センサ回路等に実装可能で汎用性に富む基準電圧発生装置について検討するが、ツェナ-ダイオード型基準電圧で問題になるのは、(1)ゆらぎと雑音と(2)温度依存性である。 先ず(1)の問題に対しては、ツェナ-ダイオードに極めて低雑音であるリチウム電池を並列接続する事を考え、(2)に対してはダイオードとリチウム電池の両者に温度制御を施す事にした。その結果、現時点では8.45ppm/℃であった温度依存性が0.45ppm/℃までに改善し、1Hz以下の揺らぎは1.5μV(p-p)以下、1Hzから2Hzまでの雑音は0.9μV(rms)以下のものを得ている。 ここで、市販の基準電圧では得られない0.1ppm/℃以下の温度依存性を得るためには、ダイオードとリチウム電池両者の温度変化を±1.73×10^<-3>℃以下に抑えなければならない。これに対し、10mm厚の銅板を用いて二重構造の恒温槽を構成し、内槽に5×10^<-5>℃(p-p)の変動と平均レベル1.5×10^<-5>℃程度のゆらぎを許せば、内槽は室温フリーになる恒温槽を実現している。今後はこの二重構造を用いた場合、どの程度の基準電圧が得られるかを明らかにしていく予定である。
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