物理量を電気信号に変換する各種センサ、例えば磁心と電子回路とを用いて構成した電流や磁界センサにおける最小検出分解能は、共に磁心雑音と電子回路雑音によって規定された。 センサの検出分解能を向上させるためには、センサに用いる増幅器自身を低雑音化すると同時に、被検出諸量の大きさに対応して定める基準電圧の低雑音・低揺らぎ化も実現しなければならない。また、直流安定化電源にゆらぎと雑音も、これに用いる基準電圧の振舞いに依存して定まることから、ここにも高精度の基準電圧が要求される。 本研究では、各種センサ回路等に実装可能で汎用性に富む基準電圧発生装置について検討してきた。問題となるツェナ-ダイオードのゆらぎと雑音に対しては、ツェナ-ダイオードに抵抗を介してリチウム電池を並列接続することで解決し、1Hz以下の揺らぎは1.5μV(p-p)以下、1Hzから2MHzまでの雑音は0.9μV(rms)以下のものを実現した。また、温度依存性については、室温変化に対し、10^<-5>℃という分解能の恒温槽を構成し、その中に基準電圧回路を挿入することにより、8.45ppm/℃であったものを0.45ppm/℃までに改善している。 今検討しているのは、基準電圧に重畳している雑音の評価法である。つまり、100nV以下の雑音電圧を計測するには、市販のデジタルマルチメータ等既存の計測器では、計測不能である。従って、雑音を増幅して計測すれば、今度は商用電源に基づく雑音磁界が問題になる等、100nV以下の計測は簡単ではなく新たな計測法を確立しなければならない。
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