物理量を電気信号に変換する各種センサの最小検出分解能は、センサの構成要素である電子回路や磁心の雑音で規定された。従って、センサを高分解能化するには、増幅器自身を低雑音化すると同時に、被検出諸量の大きさに対応して定める基準電圧の低雑音・低揺らぎ化も実現しなければならなかった。これに対して、これまでセンサ回路に実装可能で汎用性に富む基準電圧の実現を目指して検討してきた。 本研究では、シェナーダイオードに極めて低雑音のリチウム電池を抵抗を介して並列接続する方式を提案した。そこで問題となった基準電圧の温度依存性に対しては、10mm厚の銅板を用いて二重構造の恒温槽を構成して対応した。その結果、内槽に5×10^<-5>℃(p-p)の変動と平均レベル1.5×10^<-5>℃のゆらぎを許せば、内槽は室温フリーとなるものを実現した。この事により、8.45ppm/℃であった温度依存性を0.45ppm/℃までに改善でき、1Hz以下の揺らぎは、1.5μV(p-p)以下にし、1Hzから2Mhzまでの雑音は、0.9μV(rms)以下を実現した。 提案した基準電圧に重畳する雑音は100nV以下と微小であるため、これを市販のデジタルマルチメータ等で直接計測することは不可能であった。これに対し、平成10年度は雑音電圧を一旦増幅して計測する方式について検討した。先ず、増幅器に混入する外来電磁雑音に対しては、二重のパーマロイパイプで構成する磁気シール装置と増幅器の並列接続による低雑音化により、300nVであったマルチメータの分解能を単一周波数ではあるが8nVまでに下げることができた。
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