| 研究概要 |
今年度の研究目的は,時間領域差分法(FDTD法)を導入して回析トモグラフィ法の高分解能化を実現し,地下物体の不均質性が強い場合にも適用可能で耐ノイズ性に優れた探査アルゴリズムを開発することである。今年度の研究成果は,以下に示す通りである。
1.地上に送受信アンテナを配置した地中探査レーダを用いて,層状媒質の誘電率を推定する再構成アルゴリズムについて考察した。まず,過渡的な散乱電磁界を導出する時間領域の順問題に関して,FDTD法を用いた定式化を行った。次に,散乱電磁界の測定値と計算値との誤差を定義して逆散乱問題を最適化問題に帰着させ,非線形最適化法として改訂準ニュートン法に着目した。2層及び4層から成る層状媒質の誘電率推定について数値的検討を行い,少ない反復回数で高分解能な再構成結果が得られることを示した。
2.1で用いた手法を拡張し,地下にある柱状埋設物体を同定する逆散乱問題の解析を行った。この問題では地下構造が複雑となるが,FDTD法の適用によって過渡的な散乱電磁界を容易に得ることができる。均質媒質中に埋設さた円柱散乱体を例に取り上げて数値シミュレーションを行い,物体の誘電率と位置を精度良く推定できることを明らかにした。
3.ボアホールレーダを用いて3次元埋設物体の誘電率を推定する再構成アルゴリズムの有効性について詳細に検討した。形状が立方体である損失性誘電体及び地下空洞の誘電率の再構成について数値的検討を行い,いずれの物体に対しても分解能の高い再構成像を取得できることを示した。
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