研究概要 |
(1)不快音の採取とその解析:最近,オ-ディオの分野で話題になっていることであるが,これまで人間の可聴帯域が20kHzまでであるとして規格化されたコンパクトディスクの音質に疑問が投げかけられている.さらに高い周波数成分が実際の楽音には含まれており,これが聴感上の印象に影響を与えているというのである.本研究の対象となっている不快音についても,その性質上,この問題を無視することはできず,より広帯域のデータ収集を行うことにした.パイオニア製DATD-07(現有)はこの問題意識に基づいた製品であり,信号の帯域を従来の2倍に拡大し,96kHzサンプリングを実現している.本機と計算機との間のデータ転送を自由に行うためのインタフェースとして新たにDAT Link(Townshend製)を利用することにした.これらの機器に,加速度ピックアップ・チャージ増幅器(アコ-製:現有)を含めて,不快音採取・録音システムを構成し,可聴帯域外の成分をも含めたガラスの打撃音を中心に信号収集を行い,解析を進めた. (2)物理モデルによる不快音の合成:物理モデルに基づいた運動方程式を解くことにより,摩擦振動の発生過程を明らかにした.パラメータとして物体間の摩擦係数,引っ張り速度等を与え,モデルの挙動の解析を行った.さらに,上記パラメータに乱数を注入することによって,より現実的な音の合成を試みた.不快音の本質ともいえるスティック・スリップの不規則性はこの乱数の与え方に依存するものであり,これが不快音合成の鍵となると思われる.
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