研究概要 |
サインによる個人照合の研究が進むに従って,システムの低コスト化,高速化が求められるようになってきている.これを達成するための1つの方法は,照合に用いる特徴を最適なものとすることである.しかし,どのような基準によりこれを達成するかが問題となっていた.そこで本研究では,評価基準としてあいまい度を用いることにより,最適な特徴の組み合わせを確認する手法を提案する.認識対象データとしては,9人の筆者が書いた48個づつの真署名データ(合計432個)とそれぞれの真署名データを提示し,練習を認めた場合の各筆者48個づつの偽筆署名データ(合計432個)をCCDカメラで撮影し,画像処理装置nexusによって画像データ化したものを用いた.なお,以後の処理を容易とするために画像サイズは256×256画素とし,1画素当り8ビットで量子化するものとする.使用する特徴としては,従来用いてきた形状に関する特徴10種,モーメントに関する特徴10種に加えて,傾斜に関する特徴8種,濃度に関する特徴2種,高筆圧部に関する特徴6種の合計36個を特徴セットとして用いた. 本手法を実際のサインデータに適用し,36特徴セットからあいまい度を評価基準として選択した最適な特徴のセブセットを用いて認識を行なうことにより,5特徴を組み合わせた時,あいまい度,認識率が共に収束することがわかった.結果として,最適な5特徴を用いることにより全筆者を平均して92.6%の認識率を得ることができ,36個全ての特徴を用いた時の認識率93.8%とほぼ同等の認識率が得られることを確認した.これにより認識時間の大幅な短縮が可能となる. 今後の方針としては,各筆者に用いる特徴を統一すること,あいまい度を個人識別に用いることが挙げられる.
|