平成8年度における研究は、次の二つの面から実施された。まず、ミリ波イメージング系の研究としては被験物体サイズ、計測距離、受波器間距離などの各物理パラメータの最適値の設計を行い、被験物体としてアルファベットの26大文字を選び、ミリ波散乱面でコートした文字板(A〜Z)を作成した。これらの文字板を被験物体として種々の実験条件の下で画像計測実験を行い、各文字物体について20種、計520種の画像データを得た。 一方、ニューラルネットワークによる後処理については、フィードフォワード型とホップフィールド型のニューラルネットワークによる画像復元のコンピュータ・シミュレーション実験を行った。文字板(A〜Z)の計測画像はイメージング系の制約された特性により非常に劣化した画像となり人間の目では元の物体を識別するのは不可能である。ニューラルネットワークによる後処理に課せられた課題は識別不可能な程度に劣化した画像を人間が元の物体を識別できる程度の画像に復元することである。フィードフォワード型ニューラルネットワークについては、入力層のユニット数、中間層の数層およびユニット数などネットワークの構造を実験的に決定し、最適構造を求めた。ホップフィールド型のニューラルネットワークについては、連続タイプと離散タイプの両方式について検討し、種々実験を行った。 今年度の実験結果からは、フィードフォワード型の方がホップフィールド型に比べてより実用的であると云える結果を得た。フィードフォワード型ニューラルネットワークは学習にはある程度の時間を要するが、実行速度は問題ない。これに比して、ホップフィールド型のニューラルネットワークは探索型アルゴリズムであるために膨大な実行時間を要するのが欠点である。次年度からは、復元率の向上と同時に、実行時間短縮方法についても研究していく。
|