研究概要 |
本研究では,高強度鋼繊維補強コンクリートを主な対象とし,個々の鋼繊維の付着挙動に基づく汎用的な構成関係を導くための基礎データを得る。鋼繊維の変形特性は実験により求める。また,実験データから鋼繊維の変形特性のモデル化を行い,材料全体の変形挙動に関する数値シミュレーションにより非線形変形特性の機構を解明する。以下に平成8年度に行った研究の項目と結果についてまとめる。 1.鋼繊維補強コンクリートの変形特性に関する実験 鋼繊維補強コンクリートの構成関係のモデル化を行うため,鋼繊維とコンクリートの間の非線形付着挙動を一軸引張試験とせん断試験により実験的に調べた。実験から,鋼繊維の本数・間隔,繊維方向角,母材のコンクリートの強度がひび割れ後の鋼繊維補強コンクリートの変形挙動におよぼす影響を明らかにした。 (1)一軸引張を受ける鋼繊維補強コンクリートの変形特性は繊維方向角の影響を受ける。最大荷量は繊維方向角が45°の場合,0°の場合よりも低減する。 (2)せん断を受ける鋼繊維補強コンクリートの変形特性は鋼繊維の間隔,繊維方向角,母材の強度の影響を受ける。繊維方向がせん断方向と逆向きの場合は初期に荷重が低下する領域があり,その他の方向の場合と異なる挙動を示す。 2.鋼繊維の変形特性のモデル化 鋼繊維単体の変形特性を表す多直線型非線形モデルと供試体全体の挙動を表す並列構造モデルを併用することにより,一軸引張またはせん断を受ける鋼繊維補強コンクリートの変形特性を表現できる。
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