本研究は、鉄筋コンクリート部材の非貫通ひび割れ(引張側に発生したひび割れが部材の中立軸付近で止まっているもの)とその部材の透水性との関係を実験的の調べることを目的としたものである。実験は、1本の鉄筋を配した梁型の供試体の引張側中央に設けたノッチよりひび割れを発生させ、持続荷重下でひび割れに液体状のX線造影剤を注入し、X線造影撮影により内部の造影剤の浸透領域を検出する方法により行った。 実験の結果、実験の範囲内で次のことがいえる。 (1)供試体に発生したひび割れを通じて造影剤がコンクリートに浸透して行く状況をX線造影撮影法により検出することに成功した。 (2)造影剤を圧力245kPaでひび割れに注入し、ひび割れ内部の圧力を測定した結果、ひび割れ先端部で225kPaとなり、約8%の圧力損失が有ることが分かった。 (3)造影剤を圧力490kPaでひび割れに注入した場合には、コンクリート中の浸透領域の面積が、245kPAの圧力で注入した場合に比べて、約2倍になった。注入圧力が高いほど、造影剤がひび割れを通ってコンクリート内に浸透する速度が大きくなるといえる。 (4)コンクリート供試体の全表面をシールした場合には、造影剤がひび割れを通して浸透する領域の面積は、シールしない場合に比べて小さくなった。コンクリートが乾燥していれば、造影剤の浸透速度は高くなるといえる。 (5)X線造影撮影法によって求めた透水性実験結果とコンクリートを割裂して直接内部の水の浸透状況観察によって求めた透水実験結果とは同じ値とはならなかった。そこで、なぜこのような相違が生じるかを実験によって明らかにした。その原因の一つは造影剤(50%濃度)の動粘性係数が水のそれに比べて、1.06となることであった。
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