研究概要 |
本研究は、震災を受けた構造物のような大変位・低サイクル疲労を受けた構造物の安全性や耐久性に関する疲労劣化度評価法を開発することを目的としている。本研究では、主に弾性波や超音波を利用したいくつかの方法を併用し、それぞれの方法で得られたデータを大容量のパソコンで収録、解析して構造物の状態を評価する方法について検討している。これを実現するために、本年度はこれに用いるパソコン一式(PC-9821 XV20/W30,その他)を購入した。そして、超音波スペクトロスコピー法で用いる岩崎通信社製の波形解析器(SM-2100C)とAE計測で用いるNF回路ブロック社製のU-プロット(9502)をGP-IBケーブルでパソコンに接続した。また、マイクロソフト社の基本ソフト(ビジュアルベーシック・プロ)を購入して、データ取り込み方法について現在検討中である。なお、この基本ソフトの取り扱いについて不慣れであるため、データ取り込み方法、および、これを用いてデータを分析あるいは解析するソフトの開発は次年度に残された。超音波スペクトロスコピー法では、1〜20kHz間や1〜400kHz間の比較的高い周波数帯域の応答スペクトルを利用して、主に構造物の材料劣化に伴う疲労度や部分的欠陥の評価に用いる。AE法は、構造物の疲労過程で発生するAEの頻度分布や振幅分布等を利用して構造物の疲労劣化度評価に用いる。今後、さらに構造物の構造的欠陥を評価するために、インパクトハンマーによる打撃応答法を併用して構造物の低周波数領域(1kHz以下)の挙動を解明するための方法について検討する予定である。これらのデータを用いて各種欠陥を推定する評価システムの構築は、現在進行中である。一方、鉄筋コンクリート梁(幅15cm,高さ20cm,長さ120cm)の繰り返し曲げ疲労試験を行って、鉄筋コンクリート(RC)梁の曲げ疲労過程における超音波応答スペクトルや単位時間当たりのAE発生率等を計測し、梁の疲労度との関係を調査している。そして、その成果を1997年度JCI年次論文報告集に現在投稿中である。
|