研究課題/領域番号 |
08650542
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中沢 正利 東北大学, 工学部, 助教授 (20198063)
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研究分担者 |
小山 茂 東北大学, 工学部, 助手 (30271886)
後藤 文彦 東北大学, 工学部, 助手 (10261596)
岩熊 哲夫 東北大学, 工学部, 教授 (60120812)
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キーワード | 鋼製橋脚 / エネルギー吸収 / 局部座屈 / 変形能 / 延性 / 弾塑性 / 繰り返し載荷 / 数値解析 |
研究概要 |
本研究の目的は、構造物のある部分に弱点を設定し、そこで局部座屈変形の局所化によるエネルギー吸収を期待することによって構造物全体の延性を確保しながら、構造物の主要部分の損傷を回避するというフェイルセーフ機能を有した構造メカニズムを考え、その具体的構造部材を創意工夫して新規開発することである。 ここでは具体的構造物として自立式単独柱の鋼製橋脚を取り上げる。この場合の居部座屈発生位置は、橋脚固定端にもっとも近く、曲げモーメントが最大となるパネルであることは自明であるので、人工的な弱点の導入は必要ない。 まず、弾塑性有限変位解析シミュレーションの数値的精度を確認するため、角形鋼管柱に関する既往の実験結果と数値解を静的繰り返し載荷条件のもとで比較し、繰り返し載荷条件での材料構成則の仮定には若干の疑問が残るものの、実用的には充分な精度でシミュレート可能であることを確認した。材料の塑性状態での局部座屈変形の発生状況を調べ、さらにこの局部座屈変形を防止するためにコーナー部に曲率をつけた断面形の耐荷性能および変形能を比較した結果、ある程度の改善は認められるものの、局部座屈発生以後の変形能は一本柱という静定構造ゆえにあまり期待できないことが分かった。(発表論文-1) 同様に、円筒形式の鋼製橋脚についてもその局部座屈変形の発生および進展状況と変形能特性を調べた。この橋脚モデルは「兵庫県南部地震」で実際に被災した実橋脚の断面構成を忠実に再現したものである。一般によく言われる「提灯座屈」形の発生がやはり橋脚の基部近傍の板厚変化点付近で生じ、鋼管の必要径厚比パラメータを満足しているにも関わらず、繰り返し水平力に対する延性はさほど期待できないことが分かった。(発表論文-2) この変形能力あるいは延性を改善すべく、ここで円筒鋼製橋脚タイプとして二重円筒形式を考え、その耐震機能特性を検討した。この構造は内円筒で上載荷重に対する強度を保ったまま、薄肉の外円筒で局部座屈を発生させて局部変形および塑性変形の局所化によるエネルギー吸収を期待するという延性向上策の具体例である。この構造に繰り返し水平変位を作用させると、外円筒の局部変形の早期発現により橋脚全体としてのエネルギー吸収能は向上するが、外円筒に引き続く内円筒の塑性化も同時に生じるため、相対的に延性の向上はほとんど認められない結果となってしまった。よって、今後はこの局部座屈変形とエネルギー吸収能の関連を明らかにするとともに、コンクリート充填などの効果についても検討する必要のあることが分かった。
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