研究概要 |
平成8年度の研究実績を以下に報告する。 応力表示型の修正二曲面構成モデルを有限要素法プログラムABAQUSの三次元シェル要素に採り入れて,繰り返し荷重を受ける鋼製部材の弾塑性有限変位解析を行い,局部座屈現象を考慮した鋼製断面のM-P-Φ特性について考察を行った。これまでの解析状況および今後の方針は,以下のようである。 (1)解析モデルとして,一定軸力および繰り返し一軸曲げモーメントを受ける鋼はり部材を採り挙げた。その部材断面力特性を調べるため,構造解析モデルの最適長さを決定した。 (2)解析モデルの主なパラメータとして,(1)使用鋼材,(2)径厚比(または幅厚比),(3)軸力比,(4)載荷履歴,(5)断面形状を用いた。 (3)上述のパラメータを変化させることにより,有限要素法プログラムABAQUSを用いてパラメトリック解析を行った。解析結果を用いて,局部座屈を考慮した鋼製橋脚断面のM-P-Φ特性を考察し,それらを単調載荷曲線,除荷曲線,再載荷曲線として定式化した。シェル要素による有限要素解析では,断面保持の仮定が用いられていないので,局部座屈の影響を解析考慮できることを明記しておきたい。 (4)断面保持の仮定を用いた(すなわち,局部座屈の影響を考慮しない),鋼はり部材の解析を有限要素プログラムFEAPを用いて行い,ABAQUSによる解析結果と比較し,局部座屈発生条件(軸力と曲げモーメントとの相関関係)を調べた。この結果を軸力-曲げモーメント空間にプロットし,局部座屈発生曲線として定義した。この相関曲線を断面力表示型構成モデルに採り入れるコーディングを行った。 (5)現在は,結果(3)で得られた,局所座屈の影響を考慮したM-P-Φ特性を有限積分法(F.I.M.)に採り入れることにより,一定荷重を受ける,鋼はり部材の一軸曲げ構造解析を行っている段階である。この結解析果と局部座屈の影響が自動的に考慮できる有限要素プログラムABAQUSの解析結果とを比較することにより,F.I.M.の精度および計算時間等について考察した。 (6)平成9年度は,様々な繰り返し荷重条件の下で,局部座屈の発生を考慮した鋼製橋脚の繰り返し変形特性の有限変位弾塑性解析を有限積分法プログラムF.I.M.および断面力構成モデルを採り入れたFEAPプログラムにより行う予定である。
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