研究概要 |
研究初年度に当たる本年度は,散乱エネルギー量を散乱体の幾何学的断面積に換算表現した弾性散乱断面積の高精度・高速近似計算法の確立を目指して研究を進めた.以下,本年度の研究計画に沿って実績を要約する. [1]半無限弾性体内クラック開口変位決定のための境界要素法の開発 三次元半無限体内に存在するクラックによる散乱問題に対して積分方程式を定式化し,積分方程式の正則化とクラック端要素の工夫によりクラック開口変位を決定するための境界要素法を開発した. [2]遠方散乱場と散乱振幅表現の導出 散乱エネルギー量の評価においては,遠方散乱場のうち散乱振幅の表現が重要となるため,クラック面からの直接散乱波と半無限表面での反射散乱波を考慮した三次元半無限グリーン関数を構成し,これを利用して遠方散乱場と散乱振幅の具体的表現を導出した. [3]弾性散乱断面積の高精度・高速計算式の導出と精度確認 半無限体内クラックによる散乱断面積の計算においては,遠方散乱変位場と応力場の表現を基に,直接波,反射波,干渉波による散乱振幅の単位半球面上の積分として散乱断面積の具体的計算表現を導いた.無限体中のクラックによる散乱断面積は,半無限体中のクラックによる散乱断面積の表現のうち直接波成分だけからの寄与を単位球面上で積分することにより計算できる.無限体中のクラックの場合,更に,弾性版光学定理を適用することにより,散乱体前方の散乱振幅の値だけから全散乱断面積の評価式を導出することができ,数値解析的にこの評価式の精度を確認した.
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