研究概要 |
研究の最終年度に当たる本年度は,構造部材内に存在するクラックの分布密度の推定式の推定精度を支配する粗な分布の成立限界を明確にした上で損傷評価法を提案することを目標にして,数値解析的に研究を遂行した.以下,本年度の研究計画に沿って実績を要約する. [1]クラックによる弾性散乱断面積の具体的評価 前年度の成果を基に,数値解析的に3次元体内クラックに対する弾性散乱断面積の解析を実行した.ここでは,弾性散乱断面積の方位特性と周波数特性が明らかになった. [2]部材内損傷,弾性散乱断面積及び散乱減衰の関係式の導出 理論構成上,損傷を構成する個々のクラックは粗(dilute)に分布しているとして,弾性散乱断面積,クラックの分布密度,散乱減衰の間の関係式を導出した.当初はクラックがかなり近接して分布していても粗な仮定は成立すると予想していたが,実際に数値解析を実行してみた結果は,粗な仮定が近似的に成立するのはクラックの配置形態と波動の入射方向に依存するということが明らかとなった. [3]散乱減衰を利用した損傷度評価法の提案 過程[2]で得た弾性散乱断面積クラックの分布密度,散乱減衰の関係を基に,散乱減衰を計測し,散乱断面積を計算し,クラックの分布密度を推定することによる構造部材の損傷度評価法を提案した.
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