地中構造物は、地震時には周辺地盤の変形の影響を受ける。それ故、地中構造物の耐震性を検討するに当たっては、地震時に地盤に生ずるひずみについて究明する必要がある。そのようなひずみを実際的に知るには観測以外の方法では困難と考えられる。しかし、実施上の問題を伴うためか地震工学上の見地からの実施例は極めて少ない。そのような事情を考えて、地盤表面に生ずる3方向の伸縮ひずみを地震時に観測してきた。地表に拡がった正三角形を想定し、その頂点位置に鉛直に鉄杭を打ち込み、鉄杭頭部間に変位計を装着して、杭間の相対変位から地盤の伸縮ひずみを求めた。なお、観測場所は千葉県野田市にある東京理科大学構内である。実際の地中構造物の設置位置は自由表面より下にあるため、地中に生ずるひずみの性質も調査する必要がある。 そこで本研究では、地震時に生ずる地中でのひずみの観測を目的として、地表面での観測場所近くに、井戸を地下水面まで掘削して、井戸底に地表と同様な方法でひずみ計を取り付け地震観測を開始して、現時点まで10ケの観測例を得た。井戸の掘削工事費、機器の購入の一部に本研究費をあてた。従来、今回得られた資料と従来のものと比較検討して、次の結論を得た。 (1)地盤にひずみの状態は、地中、地表とも純せん断状態に近い。 (2)主ひずみの方向は、地中、地表ともある方向に卓越している。 (3)地中に生ずるひずみの振幅は地表のものより大きい。
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