研究概要 |
抗張力部材としてのケーブルと,断続的に配置された抗圧材としてのリンク部材を組み合わせてプレストレスを導入したいわゆるテンセグリティ構造の開発を目指して,昨年度から一連の基礎的な考察を行っている. 本年度に実施した研究の概要は以下の通りである. (1)基本的なテンセグリティ構造要素として,2次元のアーチ型の系と3次元のダブルレイヤー型のユニットを想定し,これらの力学的性状を知るために各種の数値計算を行った.計算に用いたプログラムは,既往の研究において開発した「曲線要素を用いたケーブル構造の大変形解析」と「リンク部材の大変形解析」のプログラムを組み合わせたものであり,各部材へのプレストレスの導入も自由にシミュレート出来るようになっている. (2)各種のケーススタディにおける数値計算結果はいずれもこの構造要素の著しい非線形性を示しており,そのためつり合形状は初期値として設定された目標形状からかけ離れた値になることが多いことが判明した. (3)このため既往の研究で開発した「ケーブル構造の形状決定解析」のプログラムを改良して,テンセグリティ構造の形状決定問題にも適用できるようにし,さらに,解析結果を画像的に可視化するプログラムを作成した.このプログラムによれば,形状決定計算の結果(変形と部材力)が平面上の3次元座標によって具体的に画像として示されるので,その結果を見ながら設計のシミュレーションを容易に行うことが出来る. (4)前年度末に2次元のアーチ型モデルと3次元ダブルレイヤー型ユニットモデル(いずれもスパン長は約60cm)を製作したので,これについて簡単な載荷実験を行い,上記のプログラムによる計算結果と照合した.なお,載荷・測定用の治具に若干問題があったので改良した.これを用いて次年度引き続き実験を続行する.
|