研究概要 |
抗張力部材としてのケーブルを組んで作った系に,抗圧力部材としてのリンク部材(トラス)を断続的に配置して,相互の部材長を調節してプレストレスを導入すると一つの安定した構造系が出来る.これをテンセグリティ構造という.本研究ではこの構造系を実構造物に応用するための基礎的な考察を行なったものである. 平成8,9年度には,この構造系の数値解析を行なうために専用のコンピュータープログラムを開発することを目指し,所定の成果を得た.このプログラムは,既往の研究において発表した「曲線要素を用いたケーブル構造の大変形解析」と「骨組構造の大変形解析」の理論に基づいたものであり,各部材へのプレストレスの導入過程も自由にシミュレート出来るようになっている.これにより所要の結果が得られることを確認した. これに引き続いて本年度に実施した研究の概要は以下の通りである. 1. 上記のように開発されたプログラムを用いて,テンセグリティ構造要素の力学的な特性を詳細に調べた. 2. 基本的な構造要素についての各種のケーススタディにより,この構造系にプレストレスを与える段階では線形の微小変位理論の適用も可能であるが,外力(とくに偏載荷重,非対称荷重)の作用下では著しい非線形性が現れ,線形理論には限界があることを示し,上記の非線形解析の有用性を確かめた. 3. この非線形性のため,一般に外力を受けた時のつり合形状は初期値として設定された形状とは一致しなくなる.したがって,この構造を実際に設計する際には形状決定解析が不可欠となる.そこで既往の研究「ケーブル構造の形状決定解析」の理論を応用して,テンセグリティ構造の形状決定問題のための計算法を確立した.4. 具体的な設計例として2次元アーチ型構造をとりあげ,その実構造としての実現可能性を検討した. 5. 簡単な模型を製作し,載荷実験を行なって理論解析値との比較を行なった.
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