平成8年度は、低温熱源が岩石に与える力学的な影響を実験的な手法により明らかにすることに主眼をおいて研究を進めた。具体的には、実験室内において周囲を断熱材で覆った角柱供試体の中心に設けた円孔内に、銅パイプを介して-20℃に設定した冷媒を循環させ、角柱表面での温度とひずみの分布を計測した。この実験には砂岩を用いており、乾燥状態と湿潤状態の供試体を試験し比較することにより岩石内部に含まれる水が凍結膨張に伴い体積変化を示すとともに潜熱の影響により温度分布特性が、乾燥・湿潤の違いにより大きく変化することを示した。また、計測された半径方向ひずみが時間経過とともに減少・増加・減少の経路をたどり、最終的に定常状態に達することが判明した。この非線形性は、円孔周辺に徐々に発生する凍結域の影響であり、この現象を表現できる純粋な数値連成解析手法を開発することが本研究における数値解析的研究である。 数値解析においては、岩石材料毎に変化する凍結率などのパラメータを使用せずに、岩石実質部分の乾燥状態における材料物性値と間隙率分だけ岩石内部に含まれる水の物性値を体積平均することにより、各種の入力物性値とした。すなわち、開発した数値解析手法には構成則レベルの非線形な連成項を含んでいない状態でかつ各力学量が線形であることを仮定していても、温度変化による水の熱膨張率さえ正しく評価していれば、そのような内部変数を含む解析コードが、岩石供試体において観察される非線形性を表現できることを示すことができた。
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