研究概要 |
室内凍結融解試験および原位置試験から低温環境におかれた飽水状態の岩質材料は0℃以下で凍結膨張し,変形挙動は間隙内の水分の凍結が大きく影響していることがわかっている.また地盤内の熱現象は、熱移動・間隙水の変化・変形挙動が複雑に連成したものであることから,地盤内の熱現象を解明するためには,これら各現象が連成する場の数値解析が必要となる.そこで、本研究では運動量保存則・質量保存則・エネルギー保存則を連成して解く熱移動・応力・浸透連成解析を実施するため、各保存則について支配方程式を誘導したのち有限要素法により定式化し,それに基づいた非線形弾性解析コードを作成した.用いた構成則は各場に対して,全て見かけ上は線形であるが,水の物性が0℃を境に著しく変化することを熱膨張率の変化として導入するとともに,解析では間隙内の水が凍結して氷へと相変化する際に放出される潜熱が温度場に与える影響についても考慮し,室内凍結融解試験を模擬した.このように第一段階の解析は非線形弾性解析であるが,これにより低温環境におかれた飽水状態の岩質材料の温度分布,凍結膨張現象について実挙動を定性的にも定量的にも表現することが出来た.さらに諸物性値の異なる岩質材料を用い,室内凍結融解試験を実施したところ,熱源付近に凍上現象による破壊が確認された.この現象を表現するために,非線形弾性解析コードを弾塑性解析コードへと修正した.破壊基準としてはMohr-Coulombの式を用い,塑性ポテンシャルも破壊基準と同様のものを用いる関連流れ則を適用し,硬化則には等方硬化則を導入した.収束計算にはNewton-Raphson法を用いて,塑性化した要素の超過応力に対し残差節点外力を求めて再計算し,収束判定は応力の第1不変量でおこなった.この弾塑性解析コードにより,室内凍結融解試験で確認された凍結膨張による破壊挙動を残留ひずみも含めて定性的に表現することができた. 以上述べたように本研究では,LNGの地下貯蔵や寒冷地の凍結凍上現象に見られるような地盤に低温側の熱環境が作用する場合の基本となる実験および数値解析から,各種の境界条件を満足する数値解を得るための手法を確立し,現位置岩盤において数値解析による予測を実施・適用するための足掛かりを得たと言える.
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