研究概要 |
わが国のように傾斜地の多い山岳地帯に建設された道路は,集中豪雨や風化作用によって落石崩落の危険に曝されている。ここでは,まず落石の形状寸法および重量を考慮し,種々の傾斜角度に対する落石の転動機構をテラメカニックスの分野より明らかにすることを主たる研究目的としている。本年度は3年計画の準備段階として位置づけ,落石が自由落下するときの衝撃力を定量的に調査するための基礎実験,および落石の転動挙動をシミュレートする数値解析法の確立を実施した。その他,傾斜土槽における落石モデル転動実験の構想造り,および関連する文献の調査も実施した。 1 落石が自由落下するときの衝撃力を定量的に調査するための基礎実験 落石が防護壁に衝突するときの速度や衝撃力を解明することは,防護壁の設計において必要である。また,衝撃力と地盤の変形量の関係は,落石の転動挙動のシミュレーション解析における入力データとなる。それらのことを解明するための基礎実験を実施した。種々の質量および落下高の組合せからなる平底の落石モデルを,ゆる詰め砂質地盤上に鉛直方向に自由落下させ,衝撃加速度および落石モデルの地盤への貫入量を計測した。その結果,衝撃力および貫入量は衝突時の運動量に比例することが判明した。 2 落石の転動挙動をシミュレートする数値解析法の確立 落石が傾斜軟弱地を転動するとき,落石の位置エネルギーは,地盤のわだちによる変形のため使われるエネルギーと転動運動に使われるエネルギーに変換される。このエネルギー平衡式に基づく数値解析法の基礎式を導いた。この解析では,地盤の傾斜角,落石の寸法,質量,落下高を与え,落石の移動速度の時間分布や地盤の沈下量を計算することが可能である。落石と地盤の相互作用を表す入力定数を実験により決定する必要があり,その後実測値との比較によってこの解析法のさらなる改良を加える予定である。
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