研究概要 |
わが国のように傾斜地の多い山岳地帯に建設された道路は,集中豪雨や風化作用によって落石崩落の危険に曝されている。ここでは,まず落石の形状寸法および重量を考慮し,種々の傾斜角度に対する落石の転動機構をテラメカニックスの分野より明らかにすることを主たる研究目的としている。 本年度は,落石の質量,斜面構成材,斜面勾配が落石の線運動定数に及ぼす影響を定量的に解明することを目的とした。そのため,均質な斜面上の落石転動の室内モデル実験装置を製作した。本実験装置は,落石モデル,台車,土槽およびクレーンよりなる。落石モデルは,直径10cm,幅9.5cmの円柱で,質量の影響を調査するためにスチールおよびアルミニウム製である。また,斜面構成材としては,スチールおよび湿潤状態の密詰め豊浦標準砂を使用した。スチールは岩盤斜面に,豊浦標準砂は土砂斜面に相当する。スチール斜面では2.5〜5.0deg,豊浦標準砂斜面では15〜30degに斜面角度を変化させ,斜面長さ約230cmにて落石モデルを落下させる実験を実施した。その結果,以下に示す新しい知見が得られた。 1)落石の斜面方向の線運動(滑りおよび回転)は,等加速度運動である。落石の速度に比例する抵抗は,考慮しなくてよい。 2)土砂斜面上の落石の斜面方向加速度および速度残存係数(自由落下速度に対する落石の速度比)は,落石の質量が大きいほど,沈下による抵抗が増加するために減少する。岩盤斜面上では,落石の質量の影響を受けない。 3)岩盤斜面,土砂斜面に関わらず,落石の斜面方向加速度および速度残存係数は,斜面勾配が増加するつれて直線的に増加する。
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