軟弱粘土地盤の圧密沈下予測には、当初予測と圧密過程のある時点で行う残留沈下予測とがある。前者の沈下予測の精度は、通常の場合、工学的に満足できると一般に認識されているけれど、後者の沈下予測、とくに部分除荷を伴う場合や、圧密が進行していてその終期過程にある場合、載荷以来の詳細な沈下経緯が観測されていない場合、爾後今沈下の予測に対する信頼度はきわめて低い。多くの地盤技術者が悩むのは、ほぼこのような場合の沈下予測であって、要求される予予測精度も当初予測に比べ一般に高い。 後者の沈下予測を困難にしている理由としてつぎの結論に達した。今日の慣用圧密解析は、弾性圧密理論に基づき、その適用はe-log p平面上のある点からある点にある特定の経路を淀みなく移行する場合に限って可能である。そしてその進行度は相対沈下である圧密度によって表される。これらを満足しないあるいは確認できない部分除荷、圧密の終期過程、載荷や沈下の経緯不明ななどの場合、基本的に事後の沈下を予測できない。これを行うには、二次圧密を考慮に入れた圧密理論に基づいた圧密解析が必要である。一口に二次圧密理論と言っても多種多様であるが、基本的な部分で共通の認識が生まれてきている。すなわち、e-log p平面上の座標点はひずみ速度と有効応力(または間隙比)によって決まることである。この研究はこの立場で進められた。 今日、現場での間隙水圧、有効応力、間隙比は所要の精度での測定が十分可能である。そのため、有効応力と間隙比が知られれば、現場におけるひずみ速度を知ることができる。しかし、これは主として再圧密粘土に対して得られた知見なので、本研究では、専ら不撹乱粘土について定ひずみ速度圧密試験およびクリープ試験を行い、上述の共通認識の確認を行った。結果として、圧密過程の任意時点における予測はいわゆる圧密降伏応力を大きく超えた状態からの予測なので、再圧密粘土に近く、任意時点からの沈下予測は十分可能であるとの感触を得ている。
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