平成8年9月の台風17号の通過に伴う出水で阿武隈川河口砂州の一部が切れ、新しくできた河道を旧河道それぞれの右岸側に大規模なカスプ地形が発生した。このカスプ地形の変形機構を調べるため、次の調査解析を行った。(1)河口砂州の汀線測量、砂州の標高分布の測量を約2週間に1度実施した。(2) 2ヶ月の1回撮影されている、阿武隈川河口砂州周辺の航空写真を収集した。(3)出水時の河川流量のハイドログラフ、波浪観測データ等の外力データを収集し解析した。(4)河口周辺の深浅測量データを収集し、格子データを作成した。 深浅データと波浪データを使って、河口周辺の波の屈折解析を行った。その結果、砂州の新旧水路の海側にできた溝地形により、波が大きく屈折して火焦線を形成することが分かった。この火焦線は、種々の波向き、周期の波に対して安定して形成され、これが新水路形成時に沖に運ばれた上砂を、各水路の右岸沖側に運んで、カスプ地形を形成するという発生の機構が分かった。 引き続き測量や、データの収集を続け、また平成9年の1月に実施された深浅測量の結果を解析に取り入れて、評価精度を上げるとともに、河川流の影響、また波による土砂輸送を定量的に評価して、カスプの規模や移動を定量的に予測する手法を開発中である。
|