夏季における都市気温の上昇は近年大きな問題となっている。本研究では、都市域の重要な構成要素として、各種舗装材料であるアスファルト、コンクリート、浸透性舗装、および保水性舗装の熱特性を野外実験によって把握した。ここでは、自然状態においては浸透性舗装は表面温度上昇抑制効果はほとんど期待できないのに対し、保水性舗装では数日間にわたってその効果が期待できることを実験的に明らかにした。さらに、地中水分の蒸発効果の有する保水性舗装の大気の加熱に与える影響について、この現象を再現する数値モデルを開発した。モデルは従来砂や粘土を対象にした熱・水分同時移動方程式を適用することが有効であることを示し、保水性舗装の熱収支を定量的に評価した。次に、低層密集住宅街の熱環境の気象観測を行い、街区スケールでの熱環境特性の把握と周囲の環境条件の環境条件について明らかにした。特に、規模の小さい街区でも周囲との気温差が2度以上生じ、さらにキャノピ-内外の熱環境の違いについても言及した。さらに、既存のメソスケールモデルを改良し、ビルキャノピ-および森林キャノピ-の風、熱に与える効果をモデル化した。このモデルではビルの天空率を考慮し、放射環境を精度よく解析することを可能にし、従来困難であった都市キャノピ-からの顕熱輸送量を地表面、建物壁面、および屋上面それぞれより見積もり、これらの建物密度との関係についても明らかにした。最後に、微気候緩和の効果を有することが知られている樹林の熱収支や構造についても、リモートセンシング技術や現地観測を行った。さらに、水分・熱同時移動の数値モデルを開発し、これらの定量的な評価を行った。
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