研究概要 |
本研究は長野県における最大1・2・3日降水量を等質化し,等質化した極値降水量の特徴を分析するとともに,その降水量の母集団分布としてグンベル分布を採用し,グンベル分布のパラメータの特徴を検討したものである.得られた成果を要約すると次の様になる. 1)用いたデータは,長野県内の気象官署である長野,松本,飯田,諏訪,軽井沢の1964年から1992年までの29年分の日降水量である.この日降水量から前線,台風,低気圧毎の年最大1・2・3日降水量を抽出した.こうして得られた年最大1・2・3日降水量には等質性の仮定が満足されているみなした. 2)ヒストグラム及び確率密度関数の形状は台風の場合が最も偏平で,続いて前線,低気圧となり,非分離は前線と似た傾向をとった.一方,それらは日数が増加するにつれて偏平となった. 3)台風は分散が大きくひずみ係数及び尖り係数が小さくなり,逆に低気圧は分散が小さくひずみ係数及び尖り係数が大きくなり,非分離の分散,ひずみ係数及び尖り係数は前線と似た傾向となった.一方,日数別に平均及び分散を比較すると,日数が増加するにつれてそれらの値が大きくなった. 4)定常頻度分析において,前線の一部分及び台風の大部分の確率水文量では非分離の確率水文量より大きい値をとった.このことは従来の治水計画における頻度分析には,確率水文量を小さく見積もる,すなわち過小評価を与える可能性が存在することを示唆している. 5)水文データ時系列及びパラメータ時系列に存在する非定常性については,増減傾向やその大きさは様々であるが,多くの時系列においてその存在を確認することができた.特に,パラメータ時系列に有意な傾きが多く存在することから,確率水文量を算定する際に,非定常性を考慮する必要性があると言えた.
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