研究概要 |
今年度は,発生音に支配的な要因を持つと考えられる渦と音の関係を把握すべく,大規模な渦の発生が期待できる二次元構造物を対象に水理実験を行った.二種類の構造物模型に対して,入射波(規則波)の周期を3種類,波高を3種類変化させ,それぞれの条件に対して,構造物前面で2点,構造物上で1点,後面で2点の合計5点で水位変動,圧力,流速,及び音圧の計測を行った.なお,圧力の計測には圧力計を,音圧の計測には小型水中音圧計を使用し,計測した圧力と音圧の時間変動をサンプリング周波数1kHzでAD変換し,スペクトル解析を行った.さらに,染料を使った可視化実験を行い,構造物から発生する渦の状況をビデオ撮影するとともに目視観測を行った. その結果,1)構造物前面と後面では,形成される渦の規模は異なり,後方での渦の方が規模は大きい.また,形成された渦の動きも構造物前後で異なり,特に,高さ20cmの構造物の場合,後方での渦の方がより下方に引き込まれること,2)構造物後方で形成された渦が,流れの逆転により,前方へ移動するときに最も顕著に音圧変動が現れる.波高が大きくなり,前方で形成される渦の規模も大きくなると,その渦による音圧変動も明瞭に現れるようになること,3)構造物設置にともなうこれらの音圧変動は,本実験条件では,渦の発生周波数に相当する2倍〜4倍周波数で顕著に現れるほか,20〜25Hz,50〜60Hz,120〜130Hz付近でも顕著に現れることが判明した.さらに,これらの結果より,波動成分に比べて高い周波数帯での音圧変動は,渦流れに含まれる乱れや渦同士の干渉による流れの乱れに起因すると考えられる.
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