研究概要 |
昨年度行った二次元構造物を対象に,より詳細な数値解析を行い,構造物周辺の流れの詳細を議論するとともに,同時に得られた圧力変動に対して,時間波形,およびスペクトル特性について考究した.その結果,構造物周辺に形成される渦の非対称性,および発生する渦の数と大きさについて,ほぼ実験結果を再現可能であることを確認した.しかし,数値解析には乱れの影響が十分考慮されていないことから,実験結果の圧力の時間波形にみられる高周波数の変動まで再現することまではできなかった.ただし,構造物の設置に伴う流れの非対称性などにともなう圧力のスペクトルの変化特性については,定性的ではあるが計算可能であることが明らかとなった. さらに,今年度は,より現実の魚礁に近い三次元模型を使用し,平面水槽にて水理実験を行い,三次元構造物から発生する波動音圧の計測も行った.この際,構造物の数と配置方法も変化させ,これらの影響についても同時に考究した.その結果,1)複数の構造物が波峰方向に設置された場合,構造物間の流速は増大するが,音圧は必ずしも増加しないこと,また,2)構造物群の側方でも,流速は増大するものの音圧変動は,単一の構造物の場合よりも小さくなることが判明した.ただし,3)隅角部前面では,単一の構造物の場合よりも複数基の構造物の方が,音圧変動は大きくなる.以上のことから,魚礁のような潜水構造物を複数基設置した場合,構造物群による波の回折現象のような構造物群と波の干渉,さらにそれを構成する個々の構造物と流れの干渉が同時に生起するため,構造物群の周辺であっても局所的に音圧の増大する部分と減少する部分が生じるといえる.このことは,魚礁の配置計画に,慎重な選定が必要であることを示唆するものである.
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