河川の流況には、その水源かん養地域である、河川上流の森林の状況が大きく関係している。即ち、森林の洪水低減機能には、降水日の遮断蒸発特性が、森林の渇水緩和機能には、遮断蒸発特性の外に晴天日の蒸散特性が関係する。そこで、本年度は、日遮断蒸発量及び日蒸散量を年蒸発散量から分離する方法を開発し、河川流況に与える、気候特性、降水特性及び森林状況の影響を検討した。 (1) 森林の日遮断蒸発量及び日蒸散量を年蒸発散量から分離する方法の開発 森林流域の水収支から得た蒸発散量を、入手が極めて困難な詳細な森林状況(樹種面積、蓄積量)の経年的な資料を用いずに、蒸発散量の経年的変化を関数表現し、日気温と日降水量データを用いて日単位の遮断蒸発量と蒸散量に分離する統計的方法を提案した。森林流域に本方法を適用した結果、蒸散係数は、遮断蒸発係数の経年変化に比べ殆ど有意な変化を示さないのに対し、遮断蒸発係数は、その地域の森林の樹種、生長段階、森林施業の程度等の影響を受けやすいことが明らかとなった。 (2) 河川流況に及ぼす気候・降水特性及び森林特性の影響 宮城県花山ダム流域の夏期(7-10月)における10年間(1983-1992)の日平均気温、日降水量、日流量データを基に、(1)で得た日遮断蒸発、日蒸散モデルを適用して並列タンク付加モデル(初年度開発)のパラメータを同定した後、10年間の平均流況に与える、気温、降水量、森林遮断蒸発の影響を流況シミュレーションにより検討したところ、降水量が最も大きく、森林状況(遮断蒸発)、気温の順で影響があることが明らかとなった。従って、渇水流況改善方策として、遮断蒸発量の少ない樹種への転換と適切な森林整備が必要である。
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